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6.テイラーの定理

 「数学100の発見,日本評論社」のテイラー展開(一松信執筆)についての解説には次のようなことが書かれています.

 「ビブンのことはビブンでする」ような「純血主義」にこだわらず,積分法を早く導入し,部分積分をくりかえして,積分の剰余項をもつ公式を導いて活用するほうが賢明である.
(cf.テイラー展開(2) 部分積分を使う証明はここで与えます.)

 この考え方に従ってこの公式を最初に解説したのではありませんが,学生にとってはこちらの方が理解しやすいようです.しかし,平均値の定理の一般化であるテイラーの定理も大切です.今回はこのテイラーの定理の証明もします.
 ところで,「ビブンのことはビブンでする」は有名な数学者高木貞治のダジャレ(自分のことは自分でする)としてよく知られているが,「微分のことは微分でせよとは 謎とその究明2 梅田亨,数学セミナー 2004年2月号」 には正反対のことが書かれています.

 「…要約すれば,微分と積分とを切り離し又は対立させて,「微分のことは微分でする」というような考え方は不適切であろうというのだ.両手ですれば具合よくできることを強いて片手でしてみたり,両足でらくに歩けるのを片足で跳ねていくようなことは,特別の理由がない限り,無益な難行苦行というものであろう.(高木貞治)」

 従って,高木先生は「微分のことは微分でする」べきだとは思っていなかったということになるようです.
 
6.1 平均値の定理
 関数
f(x)が ax b で微分可能であるとき,
をみたす実数c が存在する.このb x におきかえて式を書き直すと,次のようになる.
 この式を一般化するとテイラーの定理が得られます.上記の文献によると,「解析的関数論 1797」でラグランジュ(J.L.Lagrange 1736-1813)がこの定理を論じたとのことです.
(注)上記の平均値の定理において,とくに,f (a)=f (b)のとき,
をみたす実数c が存在する.この定理をロルの定理(M.Rolle 1652-1719)という.

6.2 テイラーの定理

 ある区間において,関数
f(x)がn 回微分可能であるとする.定数ax がこの区間内に含まれるとき,
をみたすa x の間の実数c (a c x または x c a)が存在する.この式の下線部分を剰余項というが,この剰余項を少し一般的な形で表すと,次のようになる.ただし,p はあらかじめ定められた自然数とする.
証明

 この剰余項をシュレミルヒの剰余項( 1823-1901)という.なお,
p
n の場合が最初に示した剰余項で,ラグランジュの剰余項という.それから,p=1の場合の剰余項をコーシーの剰余項(A.L.Cauchy 1789-1857)という.最後に,積分の剰余項をもつ公式の証明をしておきます.
証明

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