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7.数値計算

 テイラー展開は展開の中心付近の近似は良いのですが,ある区間においてテイラー展開式の部分和で近似しようとすると,あまり良い近似式にならない場合があります.それで,関数を多項式関数や有理関数(多項式関数では不十分な場合もあります.)による最良近似式を求めるための理論があり,実際に求められています.たとえば,「Computer Approximations, J.F.Hart etc , John Wiley & Sons.」には,100ページ以上にわたって,初等関数以外にガンマ関数,誤差関数,ベッセル関数,完全楕円積分等の最良近似多項式や最良近似有理式の表がのっています.
 このようなことを最初に述べたのは,コンピュータで関数の数値計算をするときに,テイラー展開だけで十分だと思っていると思われる人がいるからです.もちろん,テイラー展開を用いた数値計算が役に立たないということではありません.今回は具体的に数値計算をしてみましょう.

(注) 近似式の理論に興味ある人は「近似式,一松信,竹内書店」を是非みて下さい.この本は残念ながら絶版ですので,大学の図書館もしくは数学科の図書室等で借りるしかないようです.気が向いたら解説しようと思っています.

7.1 基本的なことの確認
 まず,テイラーの定理(cf.テイラー展開(6))を復習しておきます.ある区間において,関数 f(x)がn 回微分可能(もちろん,n は正の整数とします.)であるとし,定数
aはこの区間に含まれるものとする.x もこの区間内に含まれるとき,
をみたすa x の間の実数c (a c x または x c a)が存在する.いま,
とおくと,
としたときの誤差はRn+1(注意!Rnではない.)です.以下,a=0とします.
 なお,三角関数や指数函数などのテイラー展開についてはテイラー展開(2)でも解説しています.
 
7.2 指数関数
 
f(x)
の場合は
となります.したがって,
としたときの誤差は,0≦x≦1のとき,
となります.たとえば,n=5のときの誤差は
 3/6!=0.004166…
より小さくなります.ちなみに,n=5,10,20のときの有効桁はそれぞれ,4,8,19です.n=5ぐらいではかなり誤差があるように思えますが,グラフにしてみると,0≦
x≦1の範囲では誤差があるように見えません.
(計算例)
なお,
   e=2.71828 18284 59045 23536 02874 71352 ….
 
7.3 三角関数
 
f(x)=sin x ,cos x の場合を考えましょう.
とすると,0≦x≦π/4<1における誤差の絶対値は,それぞれ 
となります.なお,この2つの関数のテイラー級数は交代級数なので,上記の近似式の最後の項の次の項の絶対値より誤差の絶対値は小さくなります.したがって,この誤差の評価は少し甘いということになります.
(計算例)

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