導通チェッカーと電子回路の基礎知識(1)        目次に戻る

 電子回路の理論を一通り勉強してから電子工作してみようと考えると、いつまでたっても電子工作できません。少しずつ理解を深めていけばよいと考えれば意外に早く色々な事が分かるようになります。この電子工作の部屋では、電子工作をしながら電子回路をよく理解してもらうことを目的とします。最初は導通チェッカーです。

1.オームの法則

 導体にEV(ボルト)の電圧を加えたとき、流れる電流の大きさをTA(
アンペア)とすると、次の式が成立する。

                   E=R・I

Rは比例定数で、導体の種類、大きさ、温度等で定まる。このRをこの導体の抵抗(電気抵抗ともいう)といい、単位はオーム(Ω)である。
(例1)
   50Ωの抵抗(をもつ導体)に1Vの電圧を加えたとき流れる電流の大きさをTAとすると、オームの法則より、
        1=50・T ∴T=1÷50=0.02
となるので、0.02A=20mA(
ミリアンペア)の電流が流れることが分かる。(mは千分の一を意味する)
(注)
  数式が苦手の人は次のように覚えておくとよいでしょう。

     電圧=抵抗×電流 , 電流=電圧÷抵抗 , 抵抗=電圧÷電流

2.電力

 電流が流れているとき、1秒間に電流のなす仕事を電力という。電力の単位はワット(W)である。
導体が消費する電力をPWとするとき、流れている電流をTA、この導体に加わっている電圧をEVとすると、

                   P=T・E

である。
(例2)
   50Ωの抵抗に1Vの電圧を加えたとき、例1より、0.02Aの電流が流れるので、この抵抗が消費する電力は
        1×0.02=0.02W=20mW
である。

3.導通チェッカーで使う部品について

(1) 抵抗
 ある
パーツショップでのことです。
「××オームの抵抗を下さい。」 「抵抗の種類と電力容量は?」 「???」
結局、この人は何も買わずに帰ってしまいました。自分はこんなことにはならないと思っている人は多いと思いますが、一応説明しておきます。乾電池で動作させる電子回路の場合、普通は炭素皮膜抵抗を使います。抵抗値が100Ω以上の場合、加える電圧が5V以下のときに消費する電力は250mW以下となります。したがって、普通は電力容量が1/4Wの炭素皮膜抵抗で大体間に合います。ただし、電力容量は十分に余裕を持たせるようにしましょう。ぎりぎりだとかなり発熱するからです。

(2) LED(発光ダイオード)
 発光ダイオードは極性があり、片方向にしか電流が流れません。また、加える電圧を0Vから徐々に大きくしていくと、ある値の電圧(順方向電圧)から急に電流が流れるようになります。したがって、直接電池につなぐと過大電流(流せる最大電流は規格表に書いてある絶対最大定格の直流順電流の値ですが、普通20mA〜30mAぐらいです。)が流れてLEDがこわれてしまいますので、右図のように、適当な抵抗を直列に入れて使います。  なお、電池を逆に接続すると、数ボルトの電圧でこわれてしまうことがある(LEDの逆耐圧は普通5Vぐらい)ので、逆につながないように注意しないといけません。
 基板に直接つけるタイプのLEDは足の長いほうが+で、+側をアノード(anode)、−側をカソード(cathode)といいます。
 なお、発光色が青、緑、白の高輝度発光ダイオードの順方向電圧は3.5〜4.0Vです。ここでは赤色発光ダイオード(順方向電圧は1.8〜2.4V)を使います。
(例)
  上図において、電池の電圧を3V、抵抗値を100Ω、LEDの順方向電圧を2Vとするとき、LEDに流れる電流の大きさは、オームの法則により、
  (3−2)÷100=0.01A=10mA
となります。(抵抗の両端の電位差は3−2=1Vです。)

(3) ダイオード
  一口にダイオードといってもかなりの種類がありますので、ここではシリコンダイオードについてのみ解説します。
 ダイオードはLEDと同様に極性があり、徐々に加える電圧を大きくしていくと、シリコンダイオードの場合、0.6Vぐらいから急に電流が流れ出します。どうしてこのようになるのでしょうか?少し説明しておきます。
 シリコンダイオードにVボルトの電圧を加えたときに流れる電流の大きさをTアンペアとしたとき、TとVの関係式は、あまり大きな電流が流れない範囲において、右図に示した式で近似できます。具体的にグラフを書いてみるために、
 Ts=0.1pA,
  T=300K(約27℃)
としてコンピュータにグラフを書かせると上図のようになります。式をみれば分かるように、0.6Vより小さい電圧のときに電流が流れないのではなく、その値があまりに小さくて流れているようにみえないだけなのです。
 さて、どうしてこのような式が導き出されたのか気になる人が多いのではないかと思いますが、高校程度の数学と物理の知識を仮定しただけでは話が長くなってしまいますので、ここでは解説しませんが、いずれ解説するつもりです。


(4)トランジスタ
 理論的な勉強をする前に、トランジスタがどんな部品であるかを知っておくと理解が早まります。ここでは、シリコン(NPN)トランジスタについて解説します。
 トランジスタはB(ベース)、C(コレクタ)、E(エミッタ)の3本の端子があり、ベースとエミッタの2端子間に電流を流してみると、ダイオードと同じ性質をもつことが分かります。したがって、トランジスタが動作しているときはベースとエミッタ間の電位差は0.6Vぐらいになります。
ちなみに、、ゲルマニウムトランジスタの場合は0.3Vぐらいです。つぎに、上図のようにベースとエミッタ間に電流を流してコレクタとエミッタ間に電圧を加えると、ベースとエミッタ間に流れる電流(ベース電流という)の数十倍以上の電流(コレクタ電流という)がコレクタとエミッタ間に流れます。これがトランジスタの増幅作用です。

4.導通チェッカー

 右図が導通チェッカーの回路図です。XとYを導線でつなぐとベース電流が流れるので、コレクタ電流が流れてLEDが点灯します。    
 使用しているトランジスタについてですが、小信号用であればたいてい使えます。たとえば、よく使われる2SC1815を使えばよいでしょう。実は、下の写真の導通チェッカーでは昔の製作記事でよく使われた2SC372です。
 次に、抵抗(1/4Wの炭素皮膜抵抗でOK)の値の定め方ですが、まずコレクタとエミッタ間を短絡(ショート)させたときに20mA程度(コレクタとエミッタ間の電位差は当然0Vにできませんから、LEDに流したい電流の値より少し大きめにします。)流れるように、LEDの電流制限用抵抗の値を定めます。(2)の例と同様にして、50Ωぐらいにすればよいのですが、実際に売られている(24系列の)抵抗(…,47Ω,51Ω,56Ω,…)のなかで50Ωに近い51Ω(少しぐらい違っても問題ありません)を選びます。もちろん、LEDは順方向電圧が2Vぐらいのものを使います。電流増幅率が100のとき、ベース電流が0.2mAであれば、(コレクタとエミッタ間に十分な電圧が加わっている場合ですが)コレクタ電流が20mA流れます。ベースとエミッタ間の電位差は0.6Vでしたから、オームの法則により、ベース側の抵抗の値を
        (3−0.6)÷0.0002=12000Ω=12KΩ
にすればベース電流が0.2mAになります。回路図では10KΩにしていますが、少しぐらい異なる数値でもかまいません。
 なお、実際に流れる電流を測定すると、ベース電流が214μA=0.214mAで、コレクタ電流が12.9mAとなりました。もちろん、測定用端子(回路図のXとYの部分)をショートさせた場合に流れる電流の値です。測定用端子を
オープン(何もつながない)にすると、電流は殆ど流れませんので、スイッチは不要です。
 この回路の動作についてもう少し補足しておきます。回路図のXとYを直接つないで、ベース側の抵抗値を極めて大きくすると、ベース電流は極めて小さくなるので、この場合はh
FE倍のコレクタ電流が流れます。この抵抗の値を徐々に小さくしていくと、コレクタ電流が大きくなり、オームの法則により51Ωの抵抗の両端の電位差も大きくなっていきます。電源電圧は3Vなので、コレクタとエミッタ間の電位差は
     3V−(51Ωの抵抗の両端の電位差+LEDの順方向電圧)
となるので、コレクタ電流はある値から殆ど増加しなくなります。導通チェッカーでは、ベース電流を十分に流すことによって、トランジスタをスイッチのように使っているわけです。
(注)2SC1815GRのh
FEは200〜400で、2SC1815YのhFEは120〜240です。
  ついでに最大定格でとくに注意が必要な2つの項目も書いておきます。

  コレクタ電流の最大値(T
C):150mA , コレクタ損失(PC):400mW

 トランジスタのコレクタとエミッタ間に電流を流すと当然抵抗と同じように電力を消費します。許容できるこの電力の最大値がコレクタ損失といわれるものです。ただし、十分に大きな放熱板をつけた場合の値なので、現実にはこの値の1/4以下で使ったほうがよいでしょう。
 この導通チェッカーでは、トランジスタの電力損失は最大で4.6mWぐらいです。

 最後に一言。細かいことが気になる人は「…ぐらい」とか「約…」とかはやめてほしいと思うかもしれませんが、電子工作で使う部品はばらつきが大きく、あまり細かい計算をしても意味ないことが多いのです。ここで扱った電子回路ではおおざっぱな計算で十分です。